子どもが描く「怖い絵」の意味とは?安心して見守るヒント
「うちの子、絵に“包丁”とか“血”とか描いたんです…これって大丈夫?」
「黒いぐるぐるばかり描いていて…」
「家族の顔に目がないんです…」
そんな相談を受けることがあります。思わずドキッとしてしまう絵。でも、まず知ってほしいのは――「こわい絵=心に問題がある」とは限らないということです。

子どもは、自分の気持ちや体験を「ことば」ではなく「絵」で表現することがあります。心の中のもやもや、見たこと、感じたこと、それらを無意識に絵にしているのです。「なんだか不安…」と思った方こそ、ぜひ読み進めてみてください。
ほかにも、絵のモチーフから心理状態が読み取れることがあります。
項目 | 質問内容 | 絵の意味や心理状態 |
---|---|---|
空や天気 | 晴れや雨、嵐をよく描くのは? | 晴天=安定・幸福感、雨や嵐=不安・悲しみ。天気の変化は気持ちの揺れや希望の有無を反映。 |
食べ物 | 大きなケーキや料理を描くのは? | 欲求や楽しみを象徴。甘い物や食べ物の絵は安心感やご褒美のイメージ。極端に食べ物ばかり描く場合は欲求不満や関心の偏りも。 |
乗り物 | 車や電車、飛行機を描くのは? | 前進・冒険・成長欲求の表れ。壊れた乗り物や止まっている描写は行き詰まりや不安の可能性。 |
空想の生き物 | 怪獣や宇宙人を描くのは? | 自分の不安や怒りを投影している場合や、創造力・探求心の強さを示す場合がある。表情や行動が重要。 |
色の使い方 | 原色ばかり・暗い色ばかり使うのは? | 明るく多彩な色=活発な感情、黒や灰色が多い=抑圧や疲れ。色彩の変化は気持ちの変動を示す。 |
大きさ・配置 | 全体に大きく描く、隅に小さく描くのは? | 大きく描く=自信や主張、小さく端に描く=自信のなさや引っ込み思案。余白の多さも心理的距離感のヒント。 |
線の強さ | 濃く力強い線、弱く薄い線の違いは? | 強い筆圧=感情の高ぶり、エネルギーの多さ。弱い線=不安、遠慮、エネルギー不足。 |
同じ絵の繰り返し | 同じモチーフを何度も描くのは? | 執着・安心を求めている・強い関心。特定の場面を繰り返す場合はトラウマやこだわりも考えられる。 |
実際の保育・教育現場での対応
長年子どもを見てきた経験から言えるのは、「ちょっと変わった絵」は心の柔軟さや豊かな表現力の表れであることが多いということです。
例えば、「血のついた包丁」を描いた子どももいましたが、理由は次の通りでした:
- 「お父さんが料理で使っていたのを思い出した」
- 「テレビで探偵アニメを観ていた」
- 「戦いごっこが楽しくて」
本人たちは特に怖がっているわけでも、暴力的な気持ちを持っているわけでもありませんでした。

「包丁の絵」をめぐる2つのケース
同じモチーフでも、描く理由や気持ちはまったく異なります。
「テレビのお料理番組の包丁がかっこよかったから描いた」
「お父さんが包丁を投げる夢を見て不安になった」
👉 結論:同じ「包丁の絵」でも背景は異なるため、冷静に話を聞くことが大切です。
「血の絵を描く子どもの気持ち」
ある7歳の女の子が、赤いクレヨンで血のような絵を描いていました。母親が心配して話を聞くと、
「転んでひざを擦りむいたのが怖かった」と話しました。
・子どもは実際の体験を絵で表現することがあります。
・不安や恐怖を表す場合もあるため、安心して話せる雰囲気を大切に。

👨👩👧 親ができる3つの声かけ・関わり方
「絵にびっくりしたけど、どう関わればいい?」という方へ。今日からできるやさしい関わり方を3つ紹介します。
①「この絵、どんな気持ちで描いたの?」と聞いてみる
→ 驚いてもまずは聞くのが大切。「どうしてこんな絵を!?」ではなく、興味や関心の気持ちで声をかけましょう。
② 絵から子どもの好きな世界を見つける
→ 包丁を描いた=料理が好きかも。血を描いた=怪我の記憶が残っている?
話を広げることで気持ちが自然に見えてきます。
③ 絵をきっかけに「安心できる時間」をつくる
→ 絵を描く時間は、子どもにとって心の整理の時間。一緒に塗り絵をしたり、ほめたり、「絵って楽しいね」と共有することで、心の安定にもつながります。
絵に驚いたときのNG対応
やってしまいがちなNG対応を押さえておきましょう。
- 「こんなの描いちゃダメ!」と否定する
→ 否定されると子どもは「気持ちを言えない」と感じます。 - すぐに心配しすぎる
→ 一度きりの絵なら大きな意味はないことも。様子を見る姿勢も大切です。 - 本人が話したくないときに無理に聞く
→ そのときはそっとしておき、別のタイミングで話せるような関係を築きましょう。
おわりに:絵は「子どもの心の声」を知るヒント
子どもが描いた絵は、心の中の小さなメッセージです。包丁や血、虹…どれも、子どもが印象に残ったものを表現しようとした結果かもしれません。
大人が絵を通じて子どもの世界に耳を傾けることで、
「ことばにならない気持ち」にそっと寄り添えます。
驚く絵に出会ったときこそ、
「この子は今、何を感じているのかな?」
と、あたたかく見守ってあげてください。今日の絵が、明日の笑顔の種になります。
その一枚を、大切に見つめてあげましょう。
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