「うちの子、全然絵を描かないんですけど…大丈夫ですか?」
何度このひと言を聞いたかわかりません。
そのたびに私は、「大丈夫ですよ」と答えていました。でもその「大丈夫」には、ちゃんとした理由があります。
お子さんが絵を描かないことを心配しているお母さんへ。15年間、「描かない子」「描けない子」「描きたがらない子」をたくさん見てきた元教諭として、今日はそのことをお話しさせてください。

「描かない」には、ちゃんと理由がある
5歳の子どもが絵を描かない理由は、大きく分けると3つあります。どれも「心配が必要な状態」ではありません。

① 「うまく描けない」がわかってきた年齢だから
3〜4歳の子どもは、描いたものが「うまい・へた」という概念をほとんど持っていません。だから何でも描けるし、ぐるぐるでも楽しそうにしています。
ところが5歳前後になると、急に変わります。「友だちの絵の方が上手だ」「思った通りに描けない」ということがわかってしまうんです。
描かなくなるのは、認知が発達した証拠でもあります。自分の絵を客観視できるようになったから、「うまく描けないなら描きたくない」という気持ちが生まれる。それはとても自然なことなんです。

② 「頭の中」が先に進んでいるから
描かない子の中には、「描きたいイメージは頭の中にあるのに、手が追いつかない」という子がいます。
理想と現実のギャップが大きいほど、「描くこと」に向かえなくなります。これは絵の話だけじゃなく、「完璧じゃないならやりたくない」という性格の子に多いパターンです。
こういう子は感受性が高く、想像力が豊かなことが多い。描かないのは諦めているんじゃなく、「いつか本当に描きたいものを描く」という準備をしているともいえます。
③ 別の表現に夢中になっているから
積み木、ブロック、粘土、ごっこ遊び、歌。子どもの「表現」の形は絵だけではありません。

「絵を描かない」ということは、「表現していない」ということではないんです。今は別の形で自分を表現することに夢中になっているだけかもしれません。
実際に見てきた「描かなかった子」たちのこと
15年間の中で、「全然絵を描かない」と言われていた子が、後から絵を描き始めた場面を何度も見てきました。

「描かない子」が描き始めたきっかけ
Bちゃんは、5歳のとき一切絵を描きませんでした。お母さんから「発達に問題があるのかも」と相談されたこともありました。
ある日の図工の時間、私は「好きなものを描いて」ではなく「好きな色だけを紙に置いてみて」と声をかけました。するとBちゃんは、ものすごくゆっくりと、でも真剣な顔で、ピンクと黄色を紙の上にぽつぽつと置き始めた。
「何を描いたの?」と聞くと「花畑」と言いました。そこには確かに、Bちゃんの花畑がありました。
「描けた」という体験をひとつ積んでから、Bちゃんはお絵かきが大好きになりました。描かなかったのは「嫌い」ではなく、「怖かった」のだと、後になってわかりました。
「描けない」と「描かない」は別物
ここは大事なところなので、少し丁寧にお伝えします。
「描けない」とは、手先の発達や認知の問題でうまく形にならない状態です。これはごくまれで、専門的なサポートが必要なこともあります。
一方「描かない」は、意志の問題です。できるけどやらない。これはほとんどの場合、環境や心理的なブロックが原因で、働きかけで変わることがほとんどです。
5歳で「絵を描かない」のは、ほぼ間違いなく後者です。心配しすぎなくて大丈夫です。
「描かない子」を描きたくさせる、親の関わり方
「描いてみて」と声をかけてもなかなか動かない。そういうとき、どう関わればいいか。ポイントをお伝えします。

① 「描かなきゃいけない」をなくす
「何か描いてみて」「絵、描かないの?」という言葉は、子どもに「描くべき」というプレッシャーを与えてしまいます。
描くかどうかは子どもが決める。親は「道具がここにあるよ」と環境を作るだけ。そのくらいの距離感がちょうどいいです。
② 「完成」を求めない
「何を描いたの?」という問いかけは、「完成した作品を説明すること」を求めています。
描きかけの線でも、色だけでも「これ描いたんだね」と受け止めてあげる。完成しなくていい、と伝わると、子どもの筆が軽くなっていきます。
③ 親が隣で「ぐちゃぐちゃ」描く
子どもが描かないとき、一番効果的なのは、親が一緒に描くことです。
ただし、上手に描かないこと。「これはお母さんの気持ち」と言いながら、ぐるぐるや点々を紙にのせる。「絵は上手じゃなくていい」「自由に描いていい」ということを、言葉ではなく背中で伝えるんです。
「お母さんもへたくそだ」と子どもが笑ってくれたら、しめたものです。
④ 「絵以外の表現」を豊かにする
絵を描かないなら、別の表現を思い切り楽しませてあげてください。粘土、積み木、折り紙、歌、踊り。表現の経験が豊かになると、絵にも自然と向かいやすくなることがあります。
「表現すること」への心地よさを積み重ねることが、遠回りのようで一番の近道だと思っています。

「本当に心配が必要なとき」の見分け方
「大丈夫」と言い続けてきましたが、念のため「これは少し様子を見た方がいいかも」というサインもお伝えしておきます。
次のような状態が続く場合は、保育士や専門家に相談してみることをおすすめします。
- 絵に限らず、手を使う遊び全般を強く拒否する
- クレヨンや筆を持つこと自体を怖がる(感覚過敏の可能性)
- 何かを「作る」「表現する」という行為そのものに興味を示さない
- 園や学校での生活全般に意欲がなく、気力が落ちている様子がある
「絵を描かない」だけが気になる状態であれば、ほとんどのケースで様子を見ていて大丈夫です。

お風呂の時間を、そのまま自由なアトリエに
- お風呂の壁や浴槽に滑らかに描けて、シャワーで綺麗に流せます
- 持ちやすい太めの形状で、小さなお手てでもしっかり握れます
- 水に濡れてもドロドロに溶けにくく、お片付け用のネットも付属
よくある質問

Q. 5歳で人の絵が描けないのは遅いですか?
人の顔や体を描くようになる時期は個人差があります。4〜6歳の間で「描けるようになる」子が多いですが、描かない子が描けないとは限りません。「描こうとしていないだけ」というケースも多いです。お子さんが他のことで自分を表現できているなら、焦らず見守っていてください。
Q. 幼稚園では描くのに、家では描かないのはなぜ?
家では「お母さんに見られる」というプレッシャーがかかっている可能性があります。幼稚園では周りのみんなも描いているので安心感がある。家でも「上手じゃなくていい」という雰囲気が伝わると、変わってくることが多いです。
Q. 描くように促すのはよくないですか?
「今日も描いてみる?」くらいの軽い声かけは問題ありません。ただ「なんで描かないの」「もっと描きなさい」という形の促しは逆効果になりやすいです。子どもが「描きたい」と思えるような環境と雰囲気を作ることの方が大切です。
Q. タブレットのお絵かきアプリなら描くのですが、それでいいですか?
もちろんいいです。「やり直せる」「失敗しても消せる」というデジタルの特性が、描くことへのハードルを下げてくれます。描く体験を積み重ねることが大切なので、道具の形にこだわらなくて大丈夫です。

✏️ まとめ|5歳が絵を描かなくても大丈夫な理由
- 5歳で描かなくなるのは「認知の発達」の証拠。うまい・へたがわかるようになったから
- 「描けない」と「描かない」は別物。5歳のほとんどは後者で、関わり方で変わる
- 「描かなきゃいけない」をなくし、環境と雰囲気を整えることが先
- 親が隣でへたくそに描く、が一番の近道になることもある
- 「絵以外の表現」を豊かにすることも、絵への入口になる
描かない時期があったっていい。その子なりのペースで、いつかきっと描き始めます。焦らないでいてあげることが、お母さんにできる一番のサポートだと思います。
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正解を探すより、
「この子の場合はどうだろう?」と立ち止まる時間を。
※唯一の正解はありません。その子に合うかどうかを、一緒に考えませんか。
いっちー
元小学校教員(15年)
ベビー&キッズ専門フォトグラファー
小学校で15年、子どもたちの育ちを間近で見てきました。その経験から、ベビー&キッズ専門フォトグラファーへ転身。
レンズを通して感じる毎日——
かわいい。謎い。純粋すぎる。
「うちの子、大丈夫かな」という不安がそっとほぐれるような記事を書いています。
この場所で書いていること
・ 子育てあるある
・ 毎日の小さな楽しみを見つけるヒント
・ 絵や行動から読み取る子どもの心

