「画用紙の真ん中にいる、真っ黒な人物。これ……私?」
「他のものはカラフルなのに、ママだけが黒い。私、嫌われてるの?」
真っ黒に描かれた自分を見て、胸がギュッとなったあなたへ
子どものお絵描きをのぞき込んだとき、ふと息が止まるような瞬間があります。そこに描かれているのは、大好きなお母さん。……のはずなのに。
- 体全体が真っ黒に塗りつぶされている。
- 顔のパーツがなく、黒い塊のよう。
- 他の子やお父さんは明るい色なのに、お母さんだけが黒。
それを見た瞬間、お母さんの心には、冷たい風が吹き抜けるような不安が広がります。

「私、最近怒りすぎたかな?」
「本当はママのこと、怖がっているの?」
「愛情が伝わっていないのかも……」
自分を否定されたような、突き放されたような悲しさ。夜、子どもが寝たあとに一人でその絵を眺めては、自分を責めてしまう。そのお気持ち、本当によくわかります。
でも、最初にお伝えさせてください。お子さんがお母さんを「黒」で描いたからといって、それが「嫌い」や「拒絶」を意味するとは限りません。むしろ、逆であることの方が多いんです。
今日は「お母さんが黒い絵」の裏側に隠された、子どもたちのピュアな視点と、色彩心理の本当の意味を、元教諭の視点からやさしく紐解いていきます。読み終える頃には、その黒い絵が、少しだけ愛おしく見えてくるはずですよ。
「お母さんが黒い絵」…まず知っておいてほしいこと
まず、ショックを受けている自分を優しく受け止めてあげましょう。

親がいちばん傷つきやすいテーマ
お絵描きのテーマが「お花」や「怪獣」なら、「あら、不思議な絵ね」と笑っていられるかもしれません。でも、描かれている主人公が「自分」となると話は別です。お母さんにとって、子どもは命よりも大切な存在。その子から「暗い色」を向けられたと感じるショックは、他の何にも代えがたいものです。冷静でいられなくて当たり前なんですよ。
子どもは“評価”として描いていない
大人の世界では、黒は「悪、闇、死」といったネガティブなイメージと結びつきがちです。でも、子どもの世界はもっとシンプル。子どもは「お母さんの性格が暗い」とか「ママは悪い人だ」という評価を絵にしているわけではありません。 彼らが描いているのは、もっと直感的な「存在感」や「印象」。そこには、大人の常識では測れない、子どもなりの理由があるのです。
なぜ大人は「黒」に敏感に反応してしまうのか
そもそも、なぜ私たちはこんなに黒という色に動揺してしまうのでしょうか。それは、私たち大人が長い年月をかけて「黒=喪服、夜、危険」といった文化的な意味づけを積み重ねてきたからです。でも子どもは、そうした社会的な意味をまだ十分に知りません。彼らにとって黒は、良い悪いのラベルがついていない、数ある色の中のひとつに過ぎないのです。
色彩心理から見る「黒」の本当の役割
「黒=怖い」という思い込みを、一度横に置いてみましょう。
黒=怖い・嫌い、ではない理由
色彩心理において、黒は「すべての色を吸収した色」です。
- 輪郭がはっきりする: 他の色に負けない、強い主張。
- いちばん強く残る色: 存在をはっきりとさせたいときに使われる。
- 安心感・安定感: 揺るがないもの、そこにあるのが当たり前のもの。
子どもにとって黒は、「一番頼りになる色」であり、「一番目立つ色」でもあるのです。🔗子どもの絵が「真っ黒」で不安なときに読んでほしい話

「大事な人ほど濃くなる」ことがある
これを専門用語では「固執」と呼ぶこともありますが、子どもは「絶対に消えてほしくないもの」「自分にとって一番インパクトがあるもの」を、一番濃い色で描く傾向があります。お母さんは、子どもの生活の中心。切っても切れない、絶対にそこにいる存在。その「圧倒的な存在感」を表現しようとした結果、手元にある一番強い色=「黒」が選ばれるのは、実はとても自然な流れなのです。
実は「単純な理由」であることも多い
ここまで心理的な背景をお伝えしてきましたが、実際には、もっと現実的な理由が隠れていることも珍しくありません。
- クレヨンセットの中で、黒だけが一番減っておらず、描きやすかった。
- 先に他の色を使ってしまい、最後に残っていたのが黒だった。
- お友達が黒で人物を描いているのを見て、真似してみたくなった。
色の心理を知ることは、お子さんの世界を理解する一つの入口になりますが、それがすべての正解というわけではありません。「深読みしすぎない」というスタンスも、心を軽くするコツのひとつです。
子どもが感情をため込まずに出せる環境づくりとして、
「ぐりぐり・思いきり描ける道具」を用意しておくのも一つです。
お母さんが黒く描かれる「よくあるパターン」
黒いお母さんの絵には、いくつか代表的なメッセージが隠されています。

① 大きくて黒いお母さん
画用紙からはみ出さんばかりの、大きくて黒いお母さん。これは、お子さんにとってあなたが「世界のすべて」であり、「自分を守ってくれる大きな壁」である証拠です。黒は強さの象徴。守ってほしい、甘えたいという気持ちが、その力強い黒色に込められていることがあります。🔗お母さんが一番大きい!?子どもの家族の絵でわかる心理
② 顔がなくて黒いお母さん
顔のパーツが描かれていないと「拒絶」に見えますが、これは「お母さんという役割」への依存を意味することがあります。特定の表情(笑っている、怒っている)を超えて、「お母さんという、自分を包み込んでくれる大きな存在」として捉えているとき、個別の顔よりも、全体を塗りつぶす「質感」が優先されることがあるのです。
③ 背景と同化した黒いお母さん
背景も黒、お母さんも黒。これは、お子さんがあなたに対して「一体感」を感じているサインかもしれません。自分とお母さんの境界線が曖昧なくらい、安心しきっている状態。特別視して「他人」として描く必要がないほど、空気のように当たり前で、信頼している関係性が透けて見えます。
④ 黒い服・黒い髪の毛だけのお母さん
顔や手足はカラフルなのに、服や髪の毛だけが黒く塗られているケースもよく見られます。これは単純に「お母さんの服が黒っぽい」「髪が黒い」という、見たままの観察による描写であることがほとんどです。むしろ、いつも見ているお母さんの姿を丁寧に再現しようとした結果とも言えるでしょう。
年齢によって「黒」の意味は変わってくる
同じ「黒いお母さん」でも、お子さんの年齢によって、その背景にある発達段階は少しずつ異なります。
3〜4歳頃:色そのものを楽しんでいる時期
この時期は、まだ「色を使い分けて意味を表現する」という段階には至っていないことがほとんどです。単純に、その日握ったクレヨンが黒だった、というシンプルな理由であることが多いでしょう。
5〜6歳頃:色に意味を込め始める時期
少しずつ「この気持ちにはこの色」という感覚が育ってくる時期です。この記事で紹介したような「存在感」「安心感」としての黒の使い方が、特に見られやすくなるのがこの頃です。
小学生以降:社会的な色のイメージも取り込み始める時期
周囲の大人や友達、メディアなどから「黒=怖い」といった一般的なイメージも少しずつ吸収し始める時期です。それでも、お母さんという安心できる対象を描くときに黒を選ぶ場合は、多くが引き続き「強さ」や「安定感」の表現であることに変わりありません。
逆に「注意して見たいケース」はどんなとき?
「黒=安心」が基本ですが、念のためセットで確認しておきたいポイントもあります。
黒さそのものではなく、全体を見る
- 他の人物との対比: お父さんやお友達は丁寧に描かれているのに、お母さんだけが乱暴に塗りつぶされている。
- 配置: 自分とお母さんの間に、太い線や壁のようなものがある。
- 表情: 小さく描かれたお母さんの顔が、明らかに泣いている、または鋭い牙がある。
絵以外のサインと重なっていないか
絵だけを切り取らず、最近の生活を振り返ってみましょう。
- 目を合わせるのを避けるようになった。
- スキンシップを嫌がる。
- 園でのトラブルが急増している。
これらが当てはまらなければ、その黒い絵は「存在感の現れ」として捉えて大丈夫です。もし気になる場合は、一人で悩まずに「最近、ママを黒で描いてくれるんだけど、どう思う?」と、旦那さんや信頼できる先生に話してみるだけでも、心が軽くなりますよ。
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やってしまいがちな親のNG反応
ショックなあまり、ついやってしまいがちな「逆効果」な反応があります。
- 「どうしてママを黒で描いたの?」と問い詰める 子どもは「ママを困らせちゃったかな?」と罪悪感を感じ、本当の表現を引っ込めてしまいます。
- 「ママのこと、嫌いなの?」と聞く これは子どもにとって一番苦しい質問です。大好きだからこそ、否定できずに黙り込んでしまうことも。
- 「ママ、こんな風に描かれると悲しいな……」 大人の解釈を押し付けられると、子どもはお絵描きを「お母さんの顔色を伺う作業」にしてしまいます。
- その場で黒いクレヨンを取り上げてしまう 「もう黒は使わないで」という対応は、子どもにとって表現そのものを制限されたように感じられてしまいます。色そのものに罪はありません。
🟡 少しクスッとするポイント 「私を黒く描いたわね……さては反抗期か?」と脳内会議を始める前に。本人は単に「黒いクレヨンが新品でかっこよかったから」という理由で塗っているだけかもしれません。子どもの動機は、時に拍子抜けするほどシンプルです。
「この色じゃ足りない気がする」
そう感じたことはありませんか。
子どもは、言葉よりも先に
色の違いで気持ちを分けています。
このクレヨンは、
その“微妙な差”を受け止めるための道具です。
※「たくさんの色=よい」ではありません。
気持ちを分けて表現したい子に向いた道具です。
安心を育てる声かけ・関わり方
黒いお母さんを描いたお子さんに、どう接すればいいのでしょうか。
評価しない・意味づけしない
「ママを黒く描いたね」という事実だけを、穏やかに伝えます。「ここにママがいるんだね」「大きく描いてくれたね」。これだけで十分です。あなたのその落ち着いた反応が、お子さんにとっての「安全基地」を再確認させてくれます。
描いた事実だけを受け取る
「この黒いところ、力強いね!」「たくさん塗り重ねたんだね」と、技術やエネルギーを認めてあげましょう。色を「善悪」で判断せず、一つの「表現」として扱う姿勢を見せてあげてください。
絵を“親子の会話のきっかけ”に
もしお子さんが自分から話し始めたら、「へぇ〜、そうなんだ」とゆっくり聞いてあげましょう。「このママはね、夜に魔法を使えるんだよ」なんて、とびきり可愛い理由が飛び出すかもしれません。
よくある質問
Q. お父さんも黒く描かれることはありますか?
A. はい、もちろんあります。同じように「一番身近で頼りになる存在」として、お父さんが黒く描かれるケースも珍しくありません。黒で描かれる対象は、その時々でお子さんが強く意識している相手、というだけのことです。誰が黒く描かれているかよりも、家族全体がどんな配置・雰囲気で描かれているかを、あたたかい目で眺めてみてください。
Q. 毎回、必ずお母さんだけが黒いのですが心配ですか?
A. 「いつも同じ色で描く」というのは、単にその子の中で定着した「お決まりのパターン」であることが多いです。人は誰しも得意な描き方のクセを持つもの。生活面での変化(食欲、睡眠、表情の明るさなど)に気になる点がなければ、心配しすぎなくて大丈夫です。
それでもモヤっとしたときに、親ができること
お子さんに寄り添う前に、まずは「傷ついた自分」をケアしてあげてください。

- 自分の感情を否定しない: 「絵一枚でショックを受けるなんて、親失格だ」なんて思わないでください。それだけ一生懸命育てている証拠です。
- 「傷ついた自分」にOKを出す: 「ママだって悲しくなるよね、よしよし」と、自分で自分に声をかけてあげましょう。
- 時間を置く: 今日はもうその絵を見ないで、おいしい温かい飲み物を飲んで寝る。明日になれば、また違う景色が見えてきます。
まとめ:お母さんが黒い=嫌われている、ではない
いかがでしたか? お子さんがあなたを黒く描いたとき。それは「嫌い」というサインではなく、むしろ以下のようなメッセージかもしれません。
- 「ママは、僕の世界で一番強くて大きい存在だよ」
- 「ママは、そこにいるのが当たり前の、揺るがない支えだよ」
- 「今の僕は、ママの存在感でいっぱいなんだ!」
子どもは「評価」ではなく「感覚」で筆を動かします。お母さんが黒いのは、お子さんの心の中で、あなたが決して消えることのない、確かな「光」を放っているからこそかもしれません。
締めの一文: 黒く描かれたお母さんは、子どもの世界から決して消えない、誰よりも確かな存在なのかもしれません。
その真っ黒な絵は、お子さんなりの「大好き」の形。今日も「描いてくれてありがとう」の気持ちで、その一枚を大切にしまっておきましょうね。
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いかがでしたか? 「うちの子も、私だけ真っ黒に塗ってたことがあります!」というエピソードがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。みんなで不安を分かち合って、一緒に笑い飛ばしていきましょう!
子どもの絵を見ていると、
「この子は、自分のことをどう思っているんだろう」
そう感じる瞬間があります。
この絵本は、
子どもを変えようとする本ではありません。
「もう、ちゃんと見てもらっている」
そう感じさせるための言葉が並んでいます。
※「自信をつけさせたい」と思ったときより、
少し元気がないと感じたときに向いています。
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小学校で15年、子どもたちの育ちを間近で見てきました。その経験から、ベビー&キッズ専門フォトグラファーへ転身。
レンズを通して感じる毎日——
かわいい。謎い。純粋すぎる。
「うちの子、大丈夫かな」という不安がそっとほぐれるような記事を書いています。
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