「絵がうまい子」の親って、どんな関わり方をしているんだろう。
そう思ったことはありませんか。
「たくさん褒めているから?」「幼いころから習わせているから?」「才能があるから?」——いろんな答えが思い浮かぶと思います。でも実際に子どもたちを見てきた立場から言うと、どれも「一番大事なこと」ではありませんでした。
私には2人の子どもがいます。上の子は絵が大好きで、気づけば毎日何かを描いている。下の子はどちらかというと体を動かす方が好きで、絵はそこまで熱心ではありません。
同じ親から生まれて、同じように関わってきたつもりなのに、なぜこんなに違うのか。2人を見てきた中で、「絵が伸びる子」に共通していることが、少しずつ見えてきました。
そして元教諭として何百人もの子どもたちの絵を見てきた経験も重なって、気づいたことがあります。「褒め方」より、もっと手前に大事なことがある、ということです。

「褒め方」より先に、もっと大事なことがある
子どもの絵を伸ばすために「どう褒めるか」を考えているお母さんはとても多いです。「上手だね」より「色使いがいいね」の方がいい、プロセスを褒めた方がいい——そういう情報も広く知られるようになってきました。
それは確かに大事です。でも私が気づいたのは、褒め方の前に、「子どもが描きたい状態になっているかどうか」が全てを決めているということです。
どんなに上手な褒め方をしても、子どもの中に「描きたい」という気持ちがなければ意味がない。逆に「描きたい」という気持ちさえあれば、親が何も言わなくても子どもは勝手に伸びていく。
では「描きたい状態」はどうやって育つのか。それが、この記事でお伝えしたいことです。
「うまくなりたい」より「描いていたい」が先
絵がうまくなっていく子に共通しているのは、「うまくなろうとしている」のではなく、「ただ描いていたい」という状態にあることです。

うちの上の子を見ていても、「うまく描こう」と意識している瞬間はほとんどありません。ただ、気になったものを描きたくて描いている。その積み重ねがいつの間にか「うまさ」になっていました。
「うまくなりたい」という目標は大人が思うより子どもの絵を縮こまらせます。「ただ描きたい」という衝動を守ることの方が、ずっと大切なんです。
絵が伸びた子の親が、していたこと3つ
教諭時代に「この子の絵は伸びているな」と感じた子の親御さんたちを振り返ったとき、共通していたことが3つありました。どれも「特別なこと」ではありません。

① 結果より「過程」を見ていた
懇談で絵の話をしたとき、「うちの子、上手に描けましたか?」と聞く親御さんと、「何を描くのが好きみたいですか?」と聞く親御さんがいます。
絵が伸びていく子の親は、ほぼ例外なく後者でした。

「何に夢中になっているか」「どんな表現が好きか」という関心の向け方が、子どもに「描いている自分が見てもらえている」という感覚を与えます。その安心感が、もっと描きたいという気持ちを育てます。
② 「比べない」を徹底していた
「お友だちより上手だね」「お兄ちゃんはもっと上手だったよ」——こういう言葉は、たとえ褒めるつもりでも、子どもの絵を評価軸の上に乗せてしまいます。
評価軸に乗ると、子どもは「評価される絵」を描こうとし始めます。安全な表現だけを選ぶようになり、冒険しなくなる。
絵が伸びた子の親は、他の誰かと比べる言葉をほとんど使っていませんでした。「あなたの絵」として受け取る、それだけです。
③ 「描く時間」を守っていた
これが一番地味で、一番大きいことだと思っています。
絵がうまくなっていく子の家には、「描く時間」がありました。習慣と言うほど固いものではなくて、「夕飯前の30分は好きなことをしていい」「テレビを見ない日は絵を描いている」というくらいの、ゆるい時間です。
でもその「ゆるい時間」が毎日あることで、子どもは「今日も描ける」という安心感の中で絵に向かいます。「描かせよう」という意図がない分、子どもが自分から筆を持ちます。
うちでも意識してきたのはこれだけです。「描きなさい」は一度も言っていない。でも上の子は毎日何かを描いています。
いろいろな画材を試したい子に
感覚タイプの子は、完成した作品よりも「描く感触」や「色が混ざる面白さ」に夢中になることがあります。
クレヨン、水彩、色鉛筆、パステルなど、さまざまな素材を自由に試せる環境を用意すると、「この描き心地が好き!」「この色の出方がおもしろい!」という発見につながります。
特に複数の画材が入ったアートセットは、「どれを使う?」と子ども自身が選ぶ体験ができるので、感覚の世界を広げるきっかけになります。
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逆に「やってしまいがちだけど逆効果」なこと
良かれと思ってやっていることが、実は子どもの「描きたい」を少しずつ削いでいることがあります。心当たりがあっても、責めないでください。私も気づく前はやっていました。

「上手だね」を連発する
「上手だね」は悪い言葉ではありません。でも毎回言われると、子どもは「上手じゃないと褒めてもらえない」というプレッシャーを感じるようになります。特に「次も上手に描かなきゃ」という気持ちになりやすい真面目な子には逆効果です。
代わりに「この色、好きだな」「ここどうやって描いたの?」という言葉の方が、子どもは「見てもらえている」と感じます。
「もっとこうしたら?」と口を出す
「もう少し色を足したら?」「空も塗った方がいいんじゃない?」——完成度を上げてほしくてついつい言いたくなりますよね。
でも、その言葉が届いた瞬間、子どもはその絵が「自分のもの」ではなくなります。自分が選んで描いていたはずが、「親の基準を満たすもの」になる。そうなると、描くことが義務に変わっていきます。
「完成しなくていい」「そのままでいい」という空気の方が、子どもは次の絵に向かいやすいんです。
「描いてみせて」と頼む
「○○描いて」「これ描いてくれない?」という頼まれ仕事は、子どもの自発的な表現とは別物です。こなす絵が増えると、「自分のために描く」という感覚が薄れていきます。
見たいなら「描いてくれたら嬉しい」と伝えて、あとは子どもに委ねる。そのくらいの距離感が、長い目で見ると一番伸びる環境です。
よくある質問
Q. 絵画教室に通わせると伸びますか?
「伸びる」かどうかは、通わせ方と本人の気持ち次第です。「行きたい」という気持ちがあって通うなら、技術と自信の両方が育ちます。一方、「行かされている」という状態が続くと、絵への気持ちが義務に変わってしまうことがあります。通わせる前に、子どもが「描くことを楽しんでいるか」を確認してみてください。
Q. 兄弟で差があります。下の子に劣等感を持たせたくなくて
これはうちでも考えてきたことです。大事なのは「上の子の方が上手」という事実を隠すのではなく、「それぞれ違う得意なことがある」という視点を家族の空気にすることです。絵が好きでない子の「好きなこと」をちゃんと見てあげることが、絵への劣等感を生まないいちばんの方法だと感じています。
Q. 描いた絵を「これ何?」と聞くのはよくないですか?
「これ何?」という問いかけ自体は問題ありません。ただ、ぐるぐるや抽象的な絵に対して「何を描いたの?」と毎回聞くと、子どもが「わかるもの」しか描かなくなることがあります。「何か描いたんだね」「たくさん色使ったね」という受け取り方を先にして、子どもが話したそうなら聞く、くらいのスタンスがちょうどいいです。
Q. 本人が「うまく描けない」と言って落ち込みます
「うまく描けない」と言える子は、理想のイメージを持っている子です。それ自体は伸びているサインです。「うまくなくていい」と言うより、「どんな絵を描きたかったの?」と聞いてみてください。描きたかったことを言葉にする作業が、次への意欲につながります。


✏️ まとめ|絵が伸びる子の親がしていたこと
- 「褒め方」より先に「描きたい状態をつくること」が全てを決める
- 絵が伸びた子の親に共通していたのは「過程を見る」「比べない」「描く時間を守る」の3つ
- 「上手だね」の連発・口出し・頼まれ仕事は、自発的な表現を少しずつ削ぐ
- 「描きなさい」と言わなくても、描ける環境と空気があれば子どもは自分から描く
- うまくなるのは目標ではなく、描き続けた結果としてついてくるもの
親にできることは、すごく地味なことばかりです。でもその地味なことが、子どもの「描きたい」を長く守ります。特別なことは何もしなくていい。ただ、描いている子のそばで「見ているよ」と感じさせてあげてください。

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正解を探すより、
「この子の場合はどうだろう?」と立ち止まる時間を。
※唯一の正解はありません。その子に合うかどうかを、一緒に考えませんか。
いっちー
元小学校教員(15年)
ベビー&キッズ専門フォトグラファー
小学校で15年、子どもたちの育ちを間近で見てきました。その経験から、ベビー&キッズ専門フォトグラファーへ転身。
レンズを通して感じる毎日——
かわいい。謎い。純粋すぎる。
「うちの子、大丈夫かな」という不安がそっとほぐれるような記事を書いています。
この場所で書いていること
・ 子育てあるある
・ 毎日の小さな楽しみを見つけるヒント
・ 絵や行動から読み取る子どもの心

