「最近、うちの子が黒ばかりで絵を描くんです。何か心配なことがあるのかな…」
子どもの絵の色が気になって、ネットで調べると「黒は不安の表れ」「暗い色は精神的に不安定なサイン」という情報が出てくることがあります。読んでいるうちに不安が膨らんで、「何かあったんだろうか」と眠れなくなったお母さんもいると聞きます。
でも、はっきりお伝えします。子どもの絵の色だけで心の状態を判断することは、できません。
元教諭として、色彩心理の情報が一人歩きすることで親が必要以上に不安になる場面を、何度も見てきました。この記事では「色と心理の本当の関係」と、「本当に気にすべきこと」を整理してお伝えします。

「色彩心理」が一人歩きしている問題
「赤は攻撃性」「黒は死や不安」「青は孤独」——こういった色と心理の対応表は、ある種の研究や理論を元にしています。ただ、これらはあくまでも傾向のひとつであって、「この色を使ったらこの心理状態」という1対1の公式ではありません。
研究者たちも「色彩心理は文化・年齢・個人によって大きく異なる」と言っています。子どもの絵の色を単純な心理の鏡として読むことには、専門家の間でも慎重な意見が多いんです。
子どもが色を選ぶ理由は、心理以外にたくさんある
子どもが特定の色ばかり使うとき、その理由は本当にさまざまです。

- 単純に「好きな色」だから——その色が今一番かっこいい、きれいに見える
- 道具の問題——その色のクレヨンが一番使いやすい、または先が尖っている
- 描いているものに合った色だから——恐竜、乗り物、宇宙など、テーマが暗い色を呼んでいる
- 友だちや憧れの人が使っていたから——マネをしているだけ
- 混色の結果——いろんな色を混ぜたら黒になった、それが面白かった
これだけの理由が考えられるのに、「黒ばかり=心が暗い」と短絡的に結びつけてしまうのは、子どもの表現に対してフェアではありません。
「黒ばかり」「赤ばかり」「暗い色ばかり」——色別に見てみると
それでも「どういう意味があるの?」と気になる方のために、よくある「色の偏り」について、実際に見てきた経験も交えてお伝えします。

黒ばかり使う子
黒は子どもにとって「強い色」「かっこいい色」です。特に男の子が好む傾向がありますが、女の子でも黒を使いこなすことに喜びを感じる子はたくさんいます。
また、黒は輪郭を描くのに使いやすいため、「絵をしっかり描きたい」という意欲が高い子が多用することもあります。「暗い」どころか、表現意欲が高い子が選ぶ色であることが少なくないんです。
教諭時代に「黒しか使わない」という子がいました。お母さんはとても心配していたのですが、その子に聞いてみると「黒が一番ちゃんと見えるから」と言っていました。視覚的なはっきりさを好んでいただけでした。
赤ばかり使う子
赤は「攻撃性」のサインとして語られることがありますが、子どもにとって赤は「エネルギーが高い色」「目立つ色」「好きなキャラクターの色」であることがほとんどです。
気持ちが前向きで活発なときに赤をたくさん使う子もいます。一概にネガティブなサインとは言えません。
茶色・灰色など「くすんだ色」ばかり使う子
大人には「暗い」「地味」に見えるくすんだ色も、子どもには「リアルな色」として選ばれることがあります。地面・木・動物・建物——現実の世界に近い色を忠実に使おうとしている、観察力の高い子に多いパターンです。
「リアルに描きたい」という気持ちが育っているサインであることが多いです。

それでも「色が気になる」とき——本当に見るべきポイント
「色だけでは判断できない」とお伝えしてきましたが、だからといって「何も気にしなくていい」ということではありません。子どもの絵の変化が何かのサインになることはたしかにあります。
ただ、そのときに見るべきは「色そのもの」ではなく、「変化のコンテキスト」です。

「急に変わった」かどうか
ずっと黒が好きな子が黒を使うのと、「先週まで明るい色ばかり使っていたのに突然黒だけになった」は、まったく別のことです。
急激な変化があったとき、その変化が絵だけでなく生活全体(食欲・睡眠・言葉・表情)にも表れているかを合わせて見てください。絵の色だけが変わっていて他が元気なら、ほとんどの場合は単純な好みの変化です。
「絵の内容」に注目する
色よりも、描かれているテーマや内容の方がサインとして読みやすいことがあります。
たとえば「閉じ込められた人」「誰かが傷ついている場面」「消えてしまいたいという言葉と一緒に描かれた絵」などは、色の問題とは別に気にかけてあげてほしいサインです。
また、同じシーンや同じ人物を繰り返し描くようになったときは、「そのことが頭から離れない」という状態のことがあります。絵を入り口に「最近どんなことが気になってる?」と話しかけてみてください。
「描くときの表情と気持ち」を見る
一番シンプルで確かなのは、子どもが絵を描いているときの様子を見ることです。
黒で描いていても、楽しそうに夢中になっているなら心配ありません。色がどれだけ明るくても、描くことを嫌がっていたり、途中で投げ出したりするようであれば、何か別のことが気になっているかもしれません。
「何色か」より「どんな気持ちで描いているか」の方が、ずっと多くのことを教えてくれます。
お風呂の時間を、そのまま自由なアトリエに
- お風呂の壁や浴槽に滑らかに描けて、シャワーで綺麗に流せます
- 持ちやすい太めの形状で、小さなお手てでもしっかり握れます
- 水に濡れてもドロドロに溶けにくく、お片付け用のネットも付属
「色彩心理」の情報と、どう付き合うか
ネットや本で「子どもの絵の色の意味」という情報を目にしたとき、どう受け取ればいいか。私なりの考えをお伝えします。

「可能性のひとつ」として読む
色彩心理の情報は「そういう傾向がある子もいる」という可能性の話です。「この色=この心理」という断言ではありません。
読むときは「ふーん、そういうこともあるんだ」くらいの距離感が適切です。自分の子どもに当てはめて不安になるための情報ではなく、「こういう視点もある」という知識として持っておくだけで十分です。
「診断」しようとしない
絵の色から子どもの心理を「診断」しようとすることは、専門家でも難しいことです。色彩心理の専門家は、絵の色だけでなく、描く過程・言葉・表情・生育環境など、あらゆる情報を総合して考えます。
一枚の絵の色だけを見て「この子はこういう状態だ」と判断することは、どんな親にも、どんな専門家にもできません。
もし本当に心配なことがあるなら、絵の色ではなく子どもの言葉・行動・生活全体を見て、保育士・スクールカウンセラー・かかりつけの小児科に相談することをおすすめします。

子どもがお絵描きでよく使う色には、その子らしい個性や今の気持ちが表れていることがあります。
「好きな色」だけでなく、「2番目に好きな色」からも性格傾向を読み解く色彩心理学の本です。親子で楽しみながら読める内容なので、お絵描き好きなお子さんがいるご家庭にもおすすめです。
「なぜこの色が好きなんだろう?」と子どもと話しながら読むと、新しい発見があるかもしれません。
よくある質問
Q. 子どもが毎回黒で塗りつぶした絵を描きます。大丈夫ですか?
塗りつぶす行為自体は、2〜4歳ごろに「全部を色で埋める」という感覚を楽しむ時期に多く見られます。また、「完成した感」を感じるために塗りつぶす子もいます。黒で塗りつぶすこと自体は、多くの場合「こうしたい」という強い意志の表れです。描いているときに楽しそうであれば、心配しなくて大丈夫です。
Q. 保育園で「お子さんの絵が気になります」と言われました
保育士や先生が絵について話してくれたときは、色の問題というより「描くときの様子や気持ち」が気になっているケースがほとんどです。「どんな様子で描いていましたか?」と具体的に聞いてみてください。絵の色そのものが問題であることはほぼなく、描く行為を通じて見えてきた子どもの状態について話したいことが多いです。
Q. 特定の色を怖がって使えない子がいます
特定の色に強い嫌悪感や恐怖を感じる子は、感覚過敏の可能性があります。色の「見え方」や「刺激の強さ」が人より強く感じられることがあります。怖がる色を無理に使わせる必要はなく、その子の感覚を尊重した関わりをしてあげてください。気になる場合は作業療法士や発達支援の専門家に相談してみることをおすすめします。
Q. 「暗い絵」を親が怖いと思うのは変ですか?
変ではありません。親が子どもの絵の変化に敏感になるのは、それだけ子どものことをよく見ているからです。「気になる」という感覚は大切にしてください。ただ、その感覚を「絵の色だけで判断する」ことに向けるのではなく、「最近子どもと話せているか」「楽しそうにしているか」という方向に向けてみてください。

✏️ まとめ|子どもの絵の色と心理について
- 「黒ばかり=暗い子」は間違い。子どもが色を選ぶ理由は心理以外にたくさんある
- 色彩心理の情報は「傾向のひとつ」であり、色だけで心の状態を診断することはできない
- 気にすべきは「何色か」より「急に変わったか」「生活全体に変化があるか」
- 絵の色より「描いているときの表情と気持ち」の方がずっと多くを教えてくれる
- 本当に心配なときは絵の色ではなく生活全体を見て、専門家に相談する
子どもが好きな色を自由に使えること、それ自体がいちばん大切なことです。「何色を使っているか」より「楽しそうに描いているか」。そこだけ見ていてあげてください。


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正解を探すより、
「この子の場合はどうだろう?」と立ち止まる時間を。
※唯一の正解はありません。その子に合うかどうかを、一緒に考えませんか。
いっちー
元小学校教員(15年)
ベビー&キッズ専門フォトグラファー
小学校で15年、子どもたちの育ちを間近で見てきました。その経験から、ベビー&キッズ専門フォトグラファーへ転身。
レンズを通して感じる毎日——
かわいい。謎い。純粋すぎる。
「うちの子、大丈夫かな」という不安がそっとほぐれるような記事を書いています。
この場所で書いていること
・ 子育てあるある
・ 毎日の小さな楽しみを見つけるヒント
・ 絵や行動から読み取る子どもの心

