「うちの子、絵に“包丁”とか“血”とか描いたんです…これって大丈夫なんでしょうか?」
そんな相談を受けることがあります。
思わずドキッとしてしまう絵。
でも、まず知っておいてほしいのは――
「こわい絵=心に問題がある」とは限らないということです。
子どもは、自分の気持ちや体験を「ことば」ではなく「絵」で表現することがよくあります。
心の中のもやもや、見たこと、感じたこと、それらを無意識のうちに絵にしているのです。
この記事では、元教諭の視点から、
- 子どもがこうした絵を描く心理
- 絵に込められた気持ち
- 親としてできる関わり方
について、やさしく、そしてていねいに解説していきます。
「なんだか不安…」と思った方こそ、ぜひ読んでみてくださいね。
子どもは絵でどんな気持ちを表現している?
子どもの絵には、いろんな気持ちが詰まっています。
「虹」や「血」「包丁」など、一見するとちょっとドキッとするようなモチーフでも、それぞれに理由があります。

たとえば…
- 虹…うれしい気持ち、希望、心が晴れた瞬間
- 血…ケガをした体験、見たものの再現、怖さや痛みを描いた記憶
- 包丁…料理が好き、テレビで見た場面の再現、またはちょっぴり怖いものへの関心

とくに赤色は「エネルギーが強い色」なので、元気な子ほどたくさん使う傾向もあります。
赤や黒などの強い色を使うと「怖いのかな?」と不安になりますが、色には意味があります。
👉 色でわかる子どもの心理|赤・青・黒…色使いに隠れた心のサインとは?
大事なのは、「何を描いたか」ではなく、「どんな気持ちで描いたか」。
その絵の背景にあるストーリーを、ゆっくりと聞いてみることで、子どもの心の世界が見えてくるかもしれません。
子どもの描いた絵についてよくある質問と、子どもの心理についてまとめました
項目 | 質問内容 | 絵の意味や心理状態 |
---|---|---|
包丁 | 子どもが包丁を描くのは大丈夫? | 不安や恐怖、攻撃的な感情を表す場合がある。料理が好きなだけの可能性も。詳細な理由を尋ねることが大切。 |
花 | 子どもが花を描くのはどんな気持ちの表れ? | ポジティブな感情を表すが、枯れた花や黒っぽい花は寂しさや孤独感を示すことがある。日常の出来事と関連性を探る。 |
家 | 家の絵から家庭環境が分かる? | 大きくて明るい家=安心感、歪んだ小さい家=不安。窓やドアの有無で閉鎖的または不安の表れ。家族関係を確認する。 |
血 | 子どもが血を描くのは危険? | 恐怖や痛み、強いストレスを表す場合がある。描かれている場所や色合いで心情を読み取ることができる。 |
虹 | 虹を描くのは良いこと? | 希望や夢を象徴するポジティブな気持ちを表すが、モノクロや不安定な形なら揺れ動く心情を表す場合がある。 |
動物 | 猛獣や怖い動物を描くのは大丈夫? | ストレスや恐怖心を抱えている可能性。動物の種類や表情、サイズなどで感情を読み解く。 |
木や森 | 子どもが枯れた木や暗い森を描くのは問題? | 元気な木=安心感、枯れた木や暗い森=不安や孤独感。木の状態や森の雰囲気から心の状態を理解する。 |
自分 | 自画像を描くのはどういう意味? | 自信や自己表現を示すことが多い。自画像の表情や姿勢で自己評価や感情の変化が見えてくる。 |
体 | 体の絵を描くのはどんな心情の表れ? | 体の部位や表現方法で心の状態がわかる。例えば、頭や手の描き方で、自己評価や欲求が見えることがある。 |
人物 | 人物の特徴から心情が分かる? | 人物の姿勢、顔の表情、周囲との関係性によって、対人関係の状態や感情の動きが反映されることが多い。 |
絵に包丁や血が描かれていると心配になりますが、他にも「ちょっと気になる絵」には共通点があります。
👉 黒い絵・目を描かない子…気になる子どもの絵の心理とは?
実際の保育・教育現場ではどう対応されている?
現場で長年子どもたちを見てきた経験から言えるのは、
「ちょっと変わった絵」は、むしろ心の柔軟さや豊かな表現力の表れであることが多いということ。
たとえば、何人もの子が「血のついた包丁」を描いたことがありました。
でも話を聞いてみると、

- 「お父さんが料理で使っていたのを思い出した」
- 「テレビで探偵のアニメを観ていた」
- 「戦いごっこが楽しくて」
といった理由がほとんど。
本人たちは、特に怖がっているわけでも、暴力的な気持ちを持っているわけでもありませんでした。
保育や学校現場では、絵に現れる子どもの心を受け止める姿勢を大切にしています。
すぐに「問題あり」と判断せず、まずは「今、どんな気持ちなんだろう?」と寄り添うようにしています。
「包丁の絵を描いた5歳児のケース」
ある保育士の話では、5歳の男の子が何度も包丁の絵を描いていたそうです。気になって話を聞いてみると、「テレビで見たお料理番組の包丁がかっこよかったから」とのことでした。一方で、別の6歳の子は、「お父さんが包丁を投げる夢を見た」と不安を感じていたそうです。
→ 同じモチーフでも背景は異なるため、親が冷静に話を聞くことが大切です。
「血の絵を描く子どもの気持ち」
ある7歳の女の子が、赤いクレヨンをたくさん使って血のような絵を描いていました。母親が心配して話を聞くと、「転んでひざを擦りむいたのが怖かった」と話したそうです。このように、実際の経験を絵で表現することもあります。
エピソードのように、子どもの描く絵は、その時々の気持ちや環境を反映していますが、必ずしも一つの絵から深刻な問題を読み取る必要はありません。大切なのは、子どもが安心して自由に表現できる環境を整え、日頃から対話を重ねることです。絵を通じて、子どもが何を伝えようとしているのかを優しく受け止めましょう。
親ができる3つの声かけ・関わり方
「絵にびっくりしたけど、どう関わればいいの?」という方へ。
今日からできる、やさしい関わり方を3つご紹介します。
①「この絵、どんな気持ちで描いたの?」と聞いてみる
→ 驚いても、まずは聞いてみるのが大切。「どうしてこんな絵を!?」ではなく、興味や関心の気持ちで声をかけてみましょう。
② 絵から子どもの好きな世界を見つける
→ 包丁を描いた=料理が好きかも。血を描いた=怪我の記憶が残ってる?
話を広げることで、自然と気持ちが見えてきます。
③ 絵をきっかけに「安心できる時間」をつくる
→ 絵を描く時間は、子どもにとって心の整理の時間でもあります。
一緒に塗り絵をしたり、ほめたり、「絵って楽しいね」と共有することで、心の安定にもつながります。
「はみ出しちゃった!」そんな塗り絵も、見方を変えると個性が光るサインです。
👉 ぬりえ、はみ出しちゃうのはダメ?|自由な表現を育てる関わり方
絵に驚いたときのNG対応とは?
ついついやってしまいがちなNG対応も、頭の片隅に入れておきましょう。
- 「こんなの描いちゃダメ!」と否定する
→ 否定されると、子どもは「気持ちを言えない」と感じてしまいます。 - すぐに心配しすぎてしまう
→ 一度きりの絵なら、大きな意味はないことも多いです。様子を見る姿勢も大切。 - 本人が話したくないときに無理に聞く
→ そのときはそっとしておいて、別のタイミングで話せるような関係を築いていきましょう。
Q. 子どもが何度も同じ怖い絵を描くのは大丈夫?
A. 何度も同じ怖い絵を描く場合、子どもが何かに強い関心を持っているか、不安やストレスを抱えている可能性があります。一度、「この絵について教えてくれる?」と優しく聞いてみましょう。
ただし、毎日描いている、または暴力的な絵が増えている場合は、学校での出来事や家庭環境を見直してみるのも大切です。
「落ち着きがないな」と感じるとき、実は絵にそのヒントが隠れているかもしれません。
👉 うちの子、落ち着きがない?絵から見える集中力の育て方
おわりに:絵は「子どもの心の声」を知る大切なヒント
子どもが描いた絵は、心の中の小さなメッセージです。
包丁や血、虹…どれも、その子の頭の中に「何か印象的だったもの」が残っていて、それを表現しようとした結果かもしれません。
大人が絵を通じて子どもの世界に耳を傾けることで、
「ことばにならない気持ち」にそっと寄り添うことができます。
驚く絵に出会ったときこそ、
「この子は今、何を感じているのかな?」
と、あたたかく見守ってあげてくださいね。
こんな記事もよく読まれています
- 黒い絵ばかり描く子、何を感じているの?
- 「パパがいない絵」を描いたら気にしたほうがいい?
- うちの子、落ち着きがない?絵と行動から見えること
- 子どもの乱暴な言葉遣いが気になったら読む記事
- 目を描かない子ども、その心理とは?
おえかき おもちゃ おもちゃサブスク おもちゃ選び方 お母さんの絵 お母さんの絵が笑っていない お母さんの絵怖い お父さんの絵 お絵かきワーク お絵描き お絵描きの心理 お食事エプロン くれよん イラスト クレヨン クレヨンはみ出す ケーキスマッシュ パパの絵 創造力 友達が小さい 友達の絵が小さい 子どものアート 子どものサイン 子どもの工作 子どもの気持ち 子どもの絵 子育て 工作 残酷な絵 絵 絵でわかる 絵でわかる子どもの心理 育児 育児グッズ 育児用品 自己肯定感 色塗り 色鉛筆 赤ちゃんとのおでかけ 造形 離乳食 黒い絵 黒く塗りつぶされた絵 黒く塗りつぶす心理 1歳おすすめおもちゃ
itti-blogをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。