上の子は、紙の端から端まで丁寧に線を引いて、時間をかけて仕上げていく。
下の子は、勢いよくぐるぐると色を重ねて、「できた!」と5分で離れていく。
同じ親から生まれて、同じ家で育って、同じように接してきたはずなのに——絵を見ると、驚くほど違う。
「どうしてこんなに違うんだろう」と不思議に思ったり、「育て方が違ったのかな」と気になったりすることはありませんか。
実は、兄弟の絵が違うのには、ちゃんとした理由があります。そしてその違いは「どちらがいい・悪い」ではなく、それぞれの子どもが自分らしい方法で世界を表現しているということです。
元教諭として、また2人の子どもを育てる親として、「兄弟の絵の違い」について見えてきたことをお伝えします。

兄弟の絵が違う、一番の理由
「同じように育てた」と感じていても、兄弟は生まれた順番が違うだけで、まったく異なる環境の中で育っています。
上の子が生まれたとき、親は初めての子育てでどこか緊張しています。丁寧に、慎重に、「ちゃんとやらなきゃ」という気持ちがある。

下の子が生まれたとき、親はすでに一度経験しています。少し余裕が生まれて、「まあ大丈夫」という空気が自然と出てくる。
子どもはその空気を敏感に感じ取っています。親の「見られ方」の違いが、子どもの表現のスタイルに影響することがあるんです。
「生まれ順」が作る、表現の違い
一般的な傾向として、こういうことが言われています。ただしこれはあくまで傾向であって、すべての兄弟に当てはまるわけではありません。
上の子に多いパターン:丁寧、ていねい、完成させたい気持ちが強い。「見られること」への意識が高く、評価を気にしやすい。失敗を嫌がったり、白紙の時間が長かったりすることがある。
下の子に多いパターン:大胆、自由、スピードが速い。「どうせ見てもらえる」という安心感がベースにある。失敗を気にせず、次々と描いていくことが多い。
これは性格の違いというより、育ってきた環境の違いから生まれたものです。どちらが優れているということはありません。
上の子と下の子の違いにモヤモヤしたら
「なぜ同じ親なのにこんなに性格が違うの?」という疑問に答えてくれる一冊です。
きょうだいそれぞれの心理や関わり方がわかり、親の声かけのヒントも見つかります。
絵のスタイル別に見てみる——うちの兄弟の話
私自身の2人の子どもを見ていても、絵のスタイルの違いは顕著でした。

「丁寧な絵」を描く子の心の中
上の子は、描く前に必ず「何を描くか」を決めます。構図を頭の中でイメージしてから、鉛筆でうっすら下書きをして、それから色を乗せていく。
一見すると「几帳面でいい子」に見えます。でも私が気づいたのは、この子は「間違えたくない」という気持ちが強いということです。
丁寧に描くのは、失敗を避けるための戦略でもありました。「ゆっくり確認しながら進めれば、間違えない」という安心感の中で描いている。
だから絵を描いているとき、この子には「うまくいかなくてもいいよ」より「どんな絵にしたいか教えて」という言葉の方が響きます。計画することを肯定してあげることで、のびのびと描けるようになっていきました。

「自由な絵」を描く子の心の中
下の子は、筆を持ったら迷わず動かします。「何を描くか」を考えるより先に手が動いている。描いている途中で「これはロケットにしよう」「やっぱりお城にしよう」と変わっていくこともしょっちゅう。
完成した絵を見ると、いろんなものが混在していてにぎやかです。でもこの子の中では「できた」という満足感がちゃんとある。
この子が絵を描くとき感じているのは、「描くこと自体が楽しい」という純粋な喜びです。完成品を評価されることよりも、描いている最中の「今」を楽しんでいる。
この子には「何描いたの?」より「楽しかった?」が一番刺さる言葉でした。
「比べてしまう」ときに起きていること
兄弟の絵を見ていると、ついつい比べてしまうことがあります。「上の子の方が丁寧だな」「下の子はもっと自由に描いているな」。
でも、子どもたちはその「比べる視線」を感じています。

「比べられる」と表現が縮む
「お兄ちゃんの絵、すごく丁寧だね」という言葉は、下の子に「自分は雑だ」と伝えることになります。「妹はのびのび描いてていいね」という言葉は、上の子に「自分は堅すぎる」と伝えることになる。
比べる言葉は、褒めているつもりでも、もう一方の子の表現を「間違い」に変えてしまいます。
それぞれの子の絵を、それぞれの子の表現として受け取る。たったそれだけのことが、兄弟どちらの絵も伸ばしていきます。
「どちらの絵が好き?」は聞かない
兄弟が一緒に絵を描いたとき「どっちの絵が上手い?」「どっちが好き?」と聞いてくる子どもがいます。
このとき「どっちも好き」という答えでは子どもは満足しません。「あなたの絵のここが好き」という、その子だけへの言葉を返してあげてください。
上の子には「この線の丁寧さが好き」、下の子には「この色の勢いが好き」。違う言葉で、それぞれを肯定する。それが兄弟それぞれの「描きたい」を守っていきます。
「描き方の違い」を、子どもに聞いてみると
ある日、2人に「絵を描くとき、どんな気持ち?」と聞いてみました。
上の子は「うまく描けるか、ちょっとドキドキする」と言いました。
下の子は「楽しい!それだけ」と言いました。
どちらが正解ということはありません。「ドキドキしながら丁寧に描く」のも「楽しくて勢いよく描く」のも、その子なりの本物の表現です。
でもこの問いかけをきっかけに、上の子には「ドキドキするよね、でもあなたの絵、いつも素敵だよ」と伝えるようにしました。すると少しずつ、描く前の時間が短くなっていきました。
子どもの「描くときの気持ち」を聞くことは、絵を伸ばす一番の近道かもしれません。
最近は幼稚園や保育園でも「マンダラぬりえ」を取り入れるところが増えています。
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よくある質問
Q. 上の子が「下の子の方が上手」と言って落ち込んでいます
上の子が「うまい・へた」で絵を評価するようになっているサインかもしれません。「上手かどうか」ではなく「どんな絵が描きたいか」という方向に関心を向け直すことが大切です。「あなたの絵は、細かいところまでちゃんと考えているのが好き」など、評価軸ではなく特徴として伝える言葉がおすすめです。
Q. 下の子が上の子の真似ばかりして、自分のスタイルがありません
真似をすることは、子どもにとって大切な学びの手段です。幼いうちは特に、憧れる人のやり方を真似することで技術と表現の幅が広がっていきます。心配しなくて大丈夫。真似をしながら少しずつ「自分だけの何か」が生まれてきます。真似の中に「これだけは違う」という要素が出てきたとき、それを大げさに喜んであげてください。
Q. 兄弟で絵のレベルに差がありすぎて、一緒に描かせると下の子が嫌がります
一緒に描かせることにこだわらなくていいです。それぞれが「自分のテーブル」「自分のテーマ」で描く時間を作ってあげてください。一緒に描くのは、どちらも楽しめるときだけで十分です。「上手い・下手」の比較が生まれやすい状況を意図的に減らすことが、下の子の「描きたい」を守ります。
Q. 兄弟で絵への熱心さが違いすぎます。片方だけ習わせてもいいですか?
本人が「行きたい」と言っているなら、迷わず行かせてあげてください。もう一方の子には「あなたには別の好きなことがある」という視点を大切にする。絵以外の表現——音楽、スポーツ、工作、料理——もその子の「表現」です。片方だけが絵を習っていても、それぞれの「好き」が尊重されていれば、劣等感にはなりにくいです。
✏️ まとめ|兄弟の絵が違う理由と、親の関わり方
- 兄弟の絵が違うのは、生まれ順が作る「育ってきた環境の違い」が大きく影響している
- 「丁寧な絵」も「自由な絵」もどちらが正解ということはない。それぞれの心の置き場所
- 比べる言葉は、褒めているつもりでも一方の表現を「間違い」に変えてしまう
- 「どちらも好き」より「あなたのここが好き」という個別の言葉を
- 「描くときどんな気持ち?」と聞くことが、絵を伸ばす一番の近道になることがある
同じ家で育っても、絵は違う。それはその子が「自分」だという証拠です。違いを心配するより、違いを「その子らしさ」として受け取ってあげてください。
いろいろな画材を試したい子に
感覚タイプの子は、完成した作品よりも「描く感触」や「色が混ざる面白さ」に夢中になることがあります。
クレヨン、水彩、色鉛筆、パステルなど、さまざまな素材を自由に試せる環境を用意すると、「この描き心地が好き!」「この色の出方がおもしろい!」という発見につながります。
特に複数の画材が入ったアートセットは、「どれを使う?」と子ども自身が選ぶ体験ができるので、感覚の世界を広げるきっかけになります。
✔ クレヨン・色鉛筆・オイルパステル・水彩入り
✔ 「どれを使う?」を楽しめる
✔ 持ち運びできる木製ケース付き
✔ お絵描き好きな子へのプレゼントにもおすすめ

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正解を探すより、
「この子の場合はどうだろう?」と立ち止まる時間を。
※唯一の正解はありません。その子に合うかどうかを、一緒に考えませんか。
いっちー
元小学校教員(15年)
ベビー&キッズ専門フォトグラファー
小学校で15年、子どもたちの育ちを間近で見てきました。その経験から、ベビー&キッズ専門フォトグラファーへ転身。
レンズを通して感じる毎日——
かわいい。謎い。純粋すぎる。
「うちの子、大丈夫かな」という不安がそっとほぐれるような記事を書いています。
この場所で書いていること
・ 子育てあるある
・ 毎日の小さな楽しみを見つけるヒント
・ 絵や行動から読み取る子どもの心

