「また昨日と同じ絵を描いてる…」「何十枚描いたらいいの?」「これって発達的に大丈夫なのかな?」
同じ絵を何度も繰り返す子どもを見ていると、心配というより少し焦るような気持ちになりませんか。結論からお伝えすると、同じ絵を繰り返し描くことはほぼ例外なく、発達の健全なサインです。「またこれ?」が「さすがだな」に変わる理由を、順番に説明します。
「同じ絵を繰り返す」——これは一般的な範囲?それとも様子見が必要?
まずここを整理します。多くの親御さんが最初に知りたいのは「心配かどうか」なので、先に判断の目安をお伝えします。

| 状況 | 判断の目安 |
|---|---|
| 同じモチーフを繰り返し描く | ✅ 一般的な範囲。探求心・こだわりのサイン |
| 描くことを楽しんでいる・自分から描きたがる | ✅ 問題なし。「好き」が続いている証拠 |
| 描いたものに名前・ストーリーをつけられる | ✅ 表現力・言語力が育っているサイン |
| 数ヶ月単位でまったく変化がない | 🔶 様子見。日常の様子と合わせて観察を |
| 描くことを強制されないと描かない・嫌がる | 🔶 別の原因(プレッシャー等)の可能性 |
「また同じ絵を描いてる」は、心配ではなく観察のサイン。子どもにとって「同じ絵を繰り返す」ことには、ちゃんとした理由があります。
なぜ同じ絵を何度も描くのか——3つの心理的な理由
子どもが同じモチーフに繰り返し向かうのは「飽きていないから」ではありません。もっと深い理由があります。

① 「納得するまでやりたい」という探求心
一度描いただけでは掴みきれなかった形・色の出方・手の動かし方。それを何度も繰り返すことで「自分のものにしようとしている」のです。プロのスポーツ選手が素振りを何千回と繰り返すのと、本質は同じです。
子どもの「繰り返し」は、粘り強さと集中力が静かに積み重なっている時間です。
② 「できた」の手応えが心の安定をつくる
「こう描けば、こうなる」という予測通りの結果は、子どもに大きな安心感を与えます。外の世界では思い通りにならないことだらけでも、紙の上では自分が主役です。同じ絵を繰り返すことは、「心の充電」の時間でもあります。保育園や学校でちょっと嫌なことがあった日ほど、いつもの絵に向かうことがあります。
③ 「同じ」に見えて、実は毎回少しずつ変わっている
親の目には「また同じ」でも、子どもの絵は確実に進化しています。ある日突然「指が5本になった」「まつ毛が加わった」——これは観察力と表現力が爆発的に伸びている瞬間です。変化は連続した積み重ねの先に突然現れます。
繰り返しで育っている4つの力
「同じ絵を描く」という行動は、一見地味に見えますが、子どもの中では非常に多くのことが起きています。

年齢別|「同じ絵を繰り返す」の見方の違い
同じ行動でも、年齢によって意味が変わります。今のお子さんの年齢に合わせて見てください。
1〜2歳:手の動きそのものが楽しい
「自分が動かすと線が出る」という発見を楽しんでいる時期です。同じぐるぐるを繰り返すのは「世界の仕組みを確かめている」行動です。止める必要はまったくありません。
3〜4歳:お気に入りを確認する「儀式」
好きなキャラクター・乗り物・家族の顔——この時期の「同じ絵」は、お気に入りのものを確かめる儀式のようなものです。「これが好き」という自分の感覚を信頼する練習でもあります。
5〜7歳:細部を詰める「完成度へのこだわり」
「もっとリアルに描きたい」「納得いくまで描く」という気持ちが強くなる時期です。同じモチーフを繰り返すのは向上心と探求心の表れで、将来の専門的な学びにつながる集中の原形です。
「また同じ絵を描いてる」——親の焦りへの処方箋
頭でわかっていても、毎日同じ絵を量産されると「もっと違うの描けばいいのに」と感じることはあります。その焦りの正体を一度整理させてください。
「成長=変化」という思い込みを手放す
私たちは無意識に「昨日と違うことができるようになること=成長」と思いがちです。でも子どもの成長には「深く掘り下げる」という方向もあります。同じ絵を何度も描くことで「根っこを深く張っている」——そう捉え直すと、気持ちが楽になります。
「隣で見ている」だけが最大のサポート
何かを教えなくていい。違うものを描かせなくていい。「ここ、昨日より細かく描いたね」と一言伝えるだけで、子どもは「見てもらえた」と感じ、次も描きたい気持ちがさらに強くなります。
親が今日からできる5つの関わり方

① 「また同じね」の代わりに「実況中継」する
- ❌「また同じ絵描いてるの?」
- ✔「今日はここ、昨日より細かく描いたんだね」
- ✔「この青、すごく力強い線だね」
- ✔「一生懸命描いてるの、見てると気持ちが落ち着くよ」
評価(上手・下手)ではなく「事実を観察して伝える」ことで、子どもは「自分のこだわりが伝わった」と感じます。
② 作品を並べて「変化」を一緒に見つける
先週の絵と今週の絵を並べてみてください。必ずどこかが変わっています。「ここが変わったね」と伝えることで、子ども自身が「自分は成長している」と気づけます。
③ 「違うものを描かせよう」より「素材を変える」
描くモチーフはそのままに、クレヨン→水彩→色鉛筆と素材だけ変えてみるのが効果的です。「また同じ絵」でも、素材が変わると全然違う体験になります。
④ 描いた絵を飾って「価値を見える化」する
本人が「これがいい」と選んだ絵を壁に貼るだけで、「自分の表現は価値がある」という自己肯定感につながります。
⑤ 集中しているときは声をかけない
没頭している時間こそ、脳が最も育っているタイミングです。「ご飯できたよ」を少し待てるなら、その集中を邪魔しないでください。「邪魔されない時間」が、習慣と自信を育てます。
よくある質問

Q. 1年以上同じキャラクターしか描かない。さすがに心配では?
長期間同じモチーフを描き続けること自体は問題ではありません。確認したいのは「変化がまったくないか」です。線の太さ・色の使い方・構図——どこか少しでも変わっているなら探求の継続中です。日常生活も楽しんでいるなら、焦る必要はありません。
Q. 描いたあとに「下手だった」と自己否定する
完璧主義のサインです。「上手だよ」と否定するより、「このへん、工夫したんだね」と具体的な部分を見つける声かけの方が効果的です。結果より過程を認める言葉が、自己否定の癖をゆっくり和らげていきます。
Q. 兄弟の絵を真似してばかり。それも「同じ」のうち?
真似は「学びの最初の形」です。憧れの人の絵を模倣することは、観察力と再現力の高さの表れでもあります。「自分の絵」が出てくるのはもう少し先。今は真似を温かく見守ってください。
✏️ まとめ|「また同じ絵」は、根っこを深く張っている時間
- 同じ絵を繰り返すのは探求心・こだわり・心の充電——発達の健全なサイン
- 「同じ」に見えて、子どもの絵は必ず少しずつ変化している
- 集中力・観察力・自己効力感・感情調整力が繰り返しの中で育つ
- 「また同じね」の代わりに「ここ、昨日より細かいね」の実況中継を
- 様子見が必要なのは「数ヶ月変化がない+日常でも元気がない」が重なるとき
「また同じ絵を描いてる」——その言葉を、今日から「深く掘っている」に変えてみてください。子どもが紙に向かっている時間は、根っこを静かに育てている、大切な時間です。
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正解を探すより、
「この子の場合はどうだろう?」と立ち止まる時間を。
※唯一の正解はありません。その子に合うかどうかを、一緒に考えませんか。
いっちー
元小学校教員(15年)
ベビー&キッズ専門フォトグラファー
小学校で15年、子どもたちの育ちを間近で見てきました。その経験から、ベビー&キッズ専門フォトグラファーへ転身。
レンズを通して感じる毎日——
かわいい。謎い。純粋すぎる。
「うちの子、大丈夫かな」という不安がそっとほぐれるような記事を書いています。
この場所で書いていること
・ 子育てあるある
・ 毎日の小さな楽しみを見つけるヒント
・ 絵や行動から読み取る子どもの心

