スイッチを押してはにやにや。引き出しを開けては中身を全部出す。ティッシュを最後の1枚まで引き抜く。物を投げては親の顔を見る——。
1歳の「なんでそれをやるの!?」な行動、毎日怒涛ですよね。でも、実はこれらのほとんどに「ちゃんとした発達上の理由」があります。意地悪でも反抗でも、ましてやしつけの問題でもありません。
この記事では、元教諭の視点から「1歳のあるある行動」をひとつひとつ解説します。理由がわかると、ちょっとだけ「まあいっか」と思えてくるから不思議です。
この記事でわかること
- スイッチを何度も押す・引き出しを開ける・ティッシュを出す理由
- 物を投げる・ドアを開け閉めする行動の発達的な意味
- 「やめさせる」より「代わりを用意する」がうまくいく理由
- 見守るべき行動と、やさしく止めるべき行動の見分け方

「繰り返す」行動には意味がある——1歳の脳で起きていること
1歳の子どもが何かを繰り返すとき、そこには「飽きない」のではなく「確かめている」という発達的な動機があります。
「押したら音が鳴る」「引いたら開く」「離したら落ちる」——これらは大人にとって当たり前の因果関係ですが、1歳の子にとってはまだ「法則の発見」なんです。何度も繰り返すことで「またそうなった!」という確認と喜びを積み重ねています。
これは「感覚運動期」と呼ばれる発達段階の特徴で、ピアジェの発達理論でも確認されている自然な知的探索行動です。止めるより、安全な範囲で「発見の喜び」を守ってあげることが大切です。
行動別に読み解く——なぜやるの?どう向き合う?
①スイッチを何度も押す
「押したら光る」「押したら音がする」——自分の行動で何かが変わるという体験は、1歳にとって最高の知的刺激です。「自分がやったから、こうなった!」という自己効力感の芽生えでもあります。
対策は「押してもいいスイッチ」を用意すること。おもちゃのボタン、音の出る絵本、押しても問題ない家電のスイッチカバーなど。「ここは押していいよ」という場所を決めてあげると、危ないスイッチへの執着が減ってきます。
②引き出しを開けて中身を全部出す
「開けたら何かある!」という期待と、「自分で開けられた!」という達成感——この2つが合わさった、とても豊かな体験をしています。手の力・指先の巧緻性の発達にも役立っています。
すべての引き出しにロックをかけるより、「この引き出しは自由に開けていい」という専用引き出しを一つ作るのがおすすめです。中に布・スプーン・小さなおもちゃなど安全なものを入れておくと、そこで満足してくれることが多いです。
③ティッシュを次々と引き抜く
「引くと出てくる」「また引くとまた出てくる」——この無限に続くような感覚が、1歳の指先と脳にとって最高のごちそうです。引く動作は手首・指先の発達に直結しています。
ティッシュは高いのでつらいですよね。代わりに布を箱に詰めた「布ティッシュボックス」を作ってあげると、同じ満足感を安全・無限に提供できます。スカーフや薄い布をたたんで重ねるだけで完成です。
④物を投げる
「手を離したら落ちる」——重力という法則を、体で実験しています。また「投げたら大人がびっくりする」という反応も面白くて繰り返すことがあります。
食べ物を投げる場合は「投げたらおしまい」と静かに告げる(G08参照)。それ以外の物を投げる場合は、「投げていいもの」を指定するのが有効です。ボール遊びコーナーを作ったり、「これは投げていいよ」と手渡したりすることで、投げる欲求を安全に満たせます。
⑤ドアを何度も開け閉めする
「開ける→閉まる→また開ける」というループが、1歳の「因果関係の確認」として最高に楽しい遊びになっています。手・腕・肩の筋力発達にも貢献しています。
指を挟まないようにドアストッパーや指はさみ防止グッズを取り付けつつ、できるだけ安全に楽しませてあげましょう。危険がなければ、この行動は無理に止めなくて大丈夫です。
「やめさせる」より「代わりを用意する」がうまくいく理由
1歳の行動に対して「だめ!」「やめて!」を繰り返しても、なかなかやめないのは当然です。なぜなら、その行動には正当な発達的動機があるから。「ダメな行動」ではなく「ダメな場所・タイミング」なのです。

「NG」より「ここならOK」を作る
「押してはいけない」ではなく「こっちのボタンは押していいよ」。「引き出しを開けちゃだめ」ではなく「この引き出しなら自由にしていいよ」。
代替の場所・もの・行動を用意することで、子どもの探索欲求を満たしながら、困る状況を減らすことができます。制限するより環境を整える方が、親も子もラクになります。
「飽きるまでやらせる」も有効
安全が確保できている行動なら、飽きるまでやらせるのも一つの方法です。1歳の集中は意外と長続きしません。満足するまでやり切ると、次第に関心が移っていきます。
「またやってる」と追いかけ回すより、安全を確認したうえで少し距離を置いて見守る——その方がお互いのストレスが少なくなることも多いです。
「見てた?」のアイコンタクトを大切に
1歳の子どもが何かをしたあと、必ず親の顔を見るのに気づいたことはありませんか?あれは「見ててくれてる?」という確認です。
「すごいね」「できたね」と目を合わせて反応してあげるだけで、子どもの安心感と自己肯定感が育ちます。行動を止めることより、「見てるよ」を伝えることの方が、長い目で見て大切なことかもしれません。
見守っていい行動と、やさしく止める行動の見分け方
すべての行動を「好きにさせていい」わけでもありません。見守っていい行動と、やさしく止めるべき行動には、シンプルな基準があります。
見守っていい行動の条件
「本人が怪我をしない」「他の人を傷つけない」「壊れて困る物でない」——この3つを満たしていれば、基本的には見守っていい行動です。
ティッシュを引き抜く、引き出しから物を出す、布を引っ張る——これらは基本的に見守っていい行動です。
やさしく止める行動の条件
「危険な場所(コンセント・刃物・高い場所)への接触」「人を叩く・かみつく」「壊れたら危ない物(ガラス・電化製品)を触る」——これらはやさしくでも確実に止めます。
止めるときは「だめ」ではなく「あぶない」「いたい」という言葉で。なぜ止めるのかを短い言葉で伝えることで、少しずつ「これはしてはいけない」が育っていきます。
繰り返し同じ行動が続くときは環境を変える
「何度言っても直らない」場合、子どもの意志の問題ではなく環境の問題であることがほとんどです。触られたくないものはしまう、届かない場所に置く——言い聞かせより環境整備の方が早く、お互いストレスが少ないです。
よくある質問(Q&A)
Q. 何度止めても同じことをします。言葉が通じていないのでしょうか?
A. 1歳は言葉の理解が発達の途中です。「だめ」という言葉の意味はわかってきても、衝動をコントロールする力(抑制力)はまだほとんどありません。繰り返すのは反抗ではなく、脳がまだその段階に達していないから。怒らず、根気よく環境を整えることが一番の近道です。
Q. 叩いたりかみついたりします。しつけとして叱るべきですか?
A. 叩く・かみつくは「気持ちを言葉で表現できない」ゆえに起こることがほとんどです。叱るより「いたい」と短く伝えて止め、「どうしたかったの?」と気持ちを代わりに言葉にしてあげる方が効果的です。感情語を積み重ねると、少しずつ「叩く」以外の表現が育ちます。
Q. 探索行動が激しすぎて家がカオスです。どこまで許せばいいですか?
A. 「安全」「人を傷つけない」の2点を守れれば、家がカオスになるのはこの時期の仕様です。割り切って「今だけ」と思えると少し楽になります。探索できる範囲を決めた「OK ゾーン」を作ると、親も子も気持ちが整理されやすくなります。
Q. これらの行動はいつ頃落ち着きますか?
A. 個人差はありますが、2歳〜2歳半頃になると言葉の発達とともに「ことば」で気持ちや欲求を伝えられるようになり、行動でのアプローチが少しずつ減ってきます。今は嵐のような時期ですが、必ず変わっていきます。

✏️ まとめ|1歳の「なぜ?」行動、全部発達のサインだった
- スイッチ・引き出し・ティッシュ・投げる・ドア——すべて因果関係の探索と感覚発達の行動
- 「繰り返す」のは脳が法則を確認している証。飽きるまでやり切ると満足して次に移る
- 「やめさせる」より「代わりを用意する」環境整備が最も効果的
- 見守っていい行動の基準は「怪我しない・傷つけない・壊れない」の3点
- 止めるときは「だめ」より「あぶない」「いたい」という言葉で理由を伝える
- 「見てた?」のアイコンタクトに応えることが、自己肯定感の土台になる
「またやってる…」と思う瞬間が、実は「またひとつ賢くなってる」瞬間です。今日もカオスな1歳育児、本当にお疲れさまです。
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正解を探すより、
「この子の場合はどうだろう?」と立ち止まる時間を。
※唯一の正解はありません。その子に合うかどうかを、一緒に考えませんか。
いっちー
元小学校教員(15年)
ベビー&キッズ専門フォトグラファー
小学校で15年、子どもたちの育ちを間近で見てきました。その経験から、ベビー&キッズ専門フォトグラファーへ転身。
レンズを通して感じる毎日——
かわいい。謎い。純粋すぎる。
「うちの子、大丈夫かな」という不安がそっとほぐれるような記事を書いています。
この場所で書いていること
・ 子育てあるある
・ 毎日の小さな楽しみを見つけるヒント
・ 絵や行動から読み取る子どもの心


