「画用紙を開いたら、おばけだらけでドキッとした。」
「いつも怪獣が戦って泣いている絵ばかり。うちの子、心が荒れているの?」
この記事の内容
その「ちょっと怖い絵」、実は心のSOSではないかもしれません
子どものお絵描きをのぞき込んだとき、思わず息を呑んでしまう瞬間があります。
真っ黒な影のような「おばけ」。 鋭い牙を剥き出しにした「怪獣」。 そして、ボロボロと大きな涙を流して「泣いている顔」。
それを見た瞬間、親の心には「もしかして、情緒不安定?」「何か怖い思いをさせている?」という不安が、さざ波のように広がります。

「もっと明るい、お花や新幹線を描いてくれたら安心するのに……」
「こんな絵ばかり描くのはやめさせたほうがいいのかな……」
そんな風に、一人で夜中にスマホで検索してしまう。そのお気持ち、本当によくわかります。
でも、最初にお伝えさせてください。 お子さんが「怖いもの」を描くのは、多くの場合、心が順調に育っている証拠です。むしろ、描くことによって自分自身の心を守り、整えていることの方が多いんですよ。
今日は、おばけや怪獣、泣いている絵の裏側に隠された「子どもたちの本当の意図」と、親御さんが肩の力を抜いて見守るためのポイントを、元教諭の視点からやさしく紐解いていきます。
おばけ・怪獣の絵を見ると親が不安になる理由
なぜ、私たちは子どもの描く「怖い絵」にこれほどまでにかき乱されるのでしょうか。
大人の「怖い」と子どもの「おもしろい」は違う
大人は絵を「完成されたメッセージ」として読み解こうとします。「怖い絵=心が病んでいる」という知識が先行し、どうしても深刻な意味を探してしまいます。 でも、子どもにとっての「怖いもの」は、もっとエンターテインメントに近い存在です。テレビのヒーロー番組や絵本に出てくる「強くて、ちょっと不気味なもの」への好奇心。彼らにとって、それは単純に「描いていてワクワクする対象」であることが多いのです。
ネット検索が不安を増やす構造
今の時代、検索すれば「子どもの絵 心理 闇」といったショッキングな見出しがすぐに見つかります。わが子を大切に想うからこそ、その1%の「最悪の可能性」に怯えてしまう。でも、目の前のお子さんが、描いたあとに「見て見て! 怖いでしょ!」と笑っているなら、ネットの情報よりもその笑顔を信じて大丈夫ですよ。
なぜ子どもはおばけや怪獣を描くの?
子どもが怖いものを描くのには、心理学的な「自浄作用(カタルシス)」が大きく関わっています。

怖いものを“外に出す”安心感
子どもにとって世界は未知の連続です。夜の暗闇や、大きな音、正体のわからない「おばけ」への恐怖。 心の中に閉じ込めておくと怖いけれど、画用紙の上に「形」にして描き出すことで、子どもはその恐怖をコントロールできるようになります。「紙の中に閉じ込めたぞ!」という安心感が、彼らの心を強くするのです。
強い存在へのあこがれ
怪獣は「怖さ」の象徴であると同時に、「圧倒的な強さ」の象徴でもあります。 自分より大きくて、何でもなぎ倒す怪獣を描くとき、子どもはその怪獣に自分を投影しています。「僕(私)だって、これくらい強くなりたい!」というエネルギーが、牙やツノになって表れているのですね。
ストーリーを作る力が育っている

おばけや怪獣を描く子は、自分の中で物語(世界観)を作る力が非常に豊かです。 「怪獣が街に来たけれど、最後はおばけが助けてくれるんだよ」といった、バトルや解決のストーリー。これは、想像力と論理的思考が育っている素晴らしいサインです。
年齢別に見る「怖い絵」のよくある意味
発達段階によって、描く理由も少しずつ変化します。

3〜4歳:感情の形探し
この時期は「怖い」という新しい感情に名前をつけている最中です。 「おばけ、いた!」「こわいねー」と言いながら描くのは、自分の感情を客観的に確認する作業。描くことで「怖い」を消化しているのです。
5〜6歳:想像と現実のあいだ
「おばけは本当にいるのかな?」「怪獣はテレビの中だけ?」と、現実と空想の境界線を学んでいる時期。 「本当にいたらどうしよう」という不安を、描くことで「大丈夫、これは僕が描いた絵だもんね」と確認し、乗り越えようとしています。
小学生:物語・世界観の広がり
自分なりの「設定」や「キャラクターデザイン」を楽しむ時期になります。 自分の弱さを克服するための「分身」として、あえて怖い姿のヒーローを描くこともあります。
泣いている顔・怒っている顔を描く理由
「ニコニコの家族」ではなく、涙を流している顔を描く。これも親としてはドキッとしますよね。
自分の気持ちとは限らない
子どもが泣いている顔を描いたからといって、本人が今悲しいとは限りません。 「誰かが転んじゃって、泣いちゃったところ」「昨日見たテレビのワンシーン」など、他者の感情への共感を表現しているだけのことも多いのです。
「泣く=悪い」ではない
子どもにとって「泣く」という行為は、感情をリセットするための大切な手段です。 泣いている顔を描けるということは、「悲しいときは泣いてもいいんだよ」という安心感がその子の中に根付いている証拠。回復していく過程まで描いているなら、全く問題ありません。
さらに詳しいサインについては、子どもの絵が伝える心理サインでも紹介しています。
注意したいのはどんなとき?
基本的には見守りで大丈夫ですが、元教諭として「ここだけは見ておいて」というポイントもお伝えします。
絵の内容より“変化”を見る
昨日までとは明らかに違う、突発的で激しい「泣き顔」が毎日続く。 描き方が急に雑になり、表情が極端に歪んで固定されている。 こうした「急激な変化」が続くときは、「何か伝えたいことがあるのかな?」と、心の声に耳を傾けるサインです。
絵以外の生活と重なっている?
絵だけで判断せず、生活全体を眺めてください。
- 食欲がない。
- 夜中に何度も飛び起きる。
- 大好きだった遊びに興味を示さない。 こうした「生活の崩れ」が絵とセットで見られるときは、園の先生や専門家にそっと相談してみましょう。
親がやりがちなNG対応
不安なあまり、ついやってしまいがちな行動。でも、これは逆効果になることが多いのです。
- 「怖いからやめよう、もっと明るい絵を描こうよ」 (表現の出口を塞がれ、子どもは「怖い」という感情を心に閉じ込めるようになります)
- 「こんなの描いちゃダメでしょ!」 (自分の内側から出たものを否定されると、自己肯定感が傷つきます)
- 無理に理由を聞き出す (「どうして泣いてるの? 誰に意地悪されたの?」と問い詰めると、子どもはママを安心させるための嘘をつくようになってしまいます)
🟡 クスッとするポイント 親が深刻な顔で「この怪獣、何かの不満?」と分析している横で、本人は「ガオー! かっこいいだろー!」と、鼻歌を歌いながら塗りつぶしている。この「温度差」こそが、大抵の場合の正解です(笑)。
安心を育てる関わり方・声かけ
怖い絵を描いたお子さんには、こんな風に接してみてください。
まずは“受け取るだけ”
「わあ、強そうな怪獣だね!」「おばけ、たくさん描いたんだね」。 意味を解釈せず、見たままを認めるだけで、子どもは「自分の世界を認めてもらえた」と安心します。
物語を広げてもいい
「この後、どうなるの?」「この怪獣はどこに行くのかな?」 物語の続きを聞いてあげると、子どもは自分の空想を共有できる喜びを感じ、恐怖をさらに「おもしろいお話」へと昇華させていきます。
描いたあと、日常に戻る
お絵描きが終わったら、「さあ、おやつ食べようか!」と明るく日常に戻りましょう。 絵はあくまで「表現の場」。描き終えたら、その感情はもう紙の上に置いてきた、と考えて大丈夫です。
―― 描くことが「選ばれた時間」になる
何に描くかで、
子どもは「この絵は大切にしていいものだ」と感じます。
ただの白い紙ではなく、少し背筋が伸びるスケッチブックがあると、
絵は“遊び”から“自分の表現”へと静かに変わっていきます。
※「人に見せる前に描きたい子」「自分の世界を静かに守りたい子」に特に向いています。
チェックリスト|心配しすぎなくていい?見極めポイント
- □ 描いているときは楽しそう
- □ おばけや怪獣に名前や設定がある
- □ 色が極端に暗いわけではない
- □ 絵以外の日常生活は元気
- □ 話しかけると内容を説明してくれる
→ 多く当てはまれば、成長過程として自然な表現の可能性が高いです。
Q&A
Q1. おばけや怪獣の絵は不安やストレスのサインですか?
A. 必ずしもそうではありません。多くは「怖さへの興味」や「想像力の発達」によるものです。
Q2. 黒い色ばかり使うのは大丈夫?
A. 黒が好き、形を強調したいなどの理由もあります。元気に描いているなら問題ないことがほとんどです。
Q3. 同じ怖いテーマばかり描く場合は?
A. 長期間続き、表情や生活面にも元気がない場合は、気持ちの負担が反映されている可能性があります。
Q4. 親はどう声をかければいい?
A. 「やめなさい」ではなく、「どんなおばけ?」「強そうだね」と絵の世界に寄り添う声かけがおすすめです。
Q5. 相談した方がいい目安は?
A. 絵+生活の変化(食欲低下、登園渋りなど)が重なる場合は、先生や専門家に相談すると安心です。
まとめ:怖いものを描ける子は、それを“外に出せる強さ”を持っています
いかがでしたか? おばけ、怪獣、泣いている顔。それらが画用紙に並ぶのは、お子さんの心が壊れているサインではありません。
それは、「怖いものに立ち向かう勇気」であり、「豊かな想像力の翼」であり、「感情を自分で整える力」の現れです。

親にできることは、その絵を怖がったりやめさせたりすることではなく、安心して「怖いもの」を出し切れる場所を守ってあげること。
締めの一文: 怖いものを描ける子は、それを“外に出せる強さ”を持っています。
「次はどんな怪獣が出てくるのかな?」と、ワクワクしながらその一枚を受け取ってあげてくださいね。あなたのその笑顔が、お子さんにとって一番の魔除けになりますよ。
いかがでしたか? 「うちの子も、最近おばけの絵ばかりで夜泣きが心配でした……」というエピソードがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。みんなで不安をシェアして、わが子の表現を丸ごと愛していきましょう!
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正解を探すより、
「この子の場合はどうだろう?」と立ち止まる時間を。
※唯一の正解はありません。その子に合うかどうかを、一緒に考えませんか。
\ 答えのない、子育ての迷いの中にいるあなたへ /
ブログでは「教育のヒント」を書いていますが、
実は私自身、毎日が迷いと後悔の連続です。
教科書通りの正解に傷ついたとき、
「この子の場合はどうだろう?」と立ち止まって、
静かに自分と向き合える場所をnoteに作りました。
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いっちー
元教諭(15年+)&プロカメラマン。
わが子の発達グレーやきょうだい児の葛藤に、涙でティッシュの山を築きながら向き合っている現役の母です。
教育の現場を知っているからこそ、外側から「正解」を押しつけられることの息苦しさや、もどかしさを感じてきました。
キラキラした正解の中で、無理をして生きるのはしんどいですよね。
「こうすべき」の前に、「この子の場合はどうだろう?」と、一緒に立ち止まれる場所でありたいと思っています。
子どもの絵に宿るサインや、言葉にならない心の機微をそっと眺めて。
今日をなんとかやり過ごすための「余白」を、一緒に見つけにいきませんか。


